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痛み伝える「ペインカード」 難病者も働ける場づくりを

11/8/2025

自身の痛みを的確に伝えることは、想像以上に難しい課題である。医療現場では、痛みを22種類に分類した問診票を用いて患者の症状を把握しようとするものの、限られた言葉の中で痛みの本質を正しく表現するのは容易ではない。私は線維筋痛症という難病を患う医師として、「患者と医師が直感的かつ効果的に痛みを共有できる方法はないか」と考え、模索を続けてきた。

研究を進める中で、「ズキッ」「チクチク」「ガンガン」などのオノマトペ(擬音語・擬態語)が痛みの表現において非常に有効であることが明らかになった。これらの言葉は痛覚を直感的に捉えやすく、患者が痛みの種類や強度を伝える際のハードルを大きく引き下げる可能性を秘めている。

こうして開発したのが「ペインカード」という革新的なツールだ。カードには多様な痛みの表現がイラストや色彩と共に配置されており、患者は自身の状態に最も近い表現を選ぶだけで、医師側に痛みを直感的に伝えることができる。この方法は、診療時間の短縮のみならず、患者の理解度や満足度の向上にも寄与すると期待されている。

さらに、このペインカードの利点は医療現場に留まらない。難病者が働く環境を整える上でも重要な役割を果たす。痛みの自己表現が容易になることで、職場の理解促進や個々に適した配慮を実現しやすくなるためだ。結果として、痛みと共に生きる患者が自己の能力を最大限発揮できる社会の構築に一歩近づくことになる。

この画期的なコミュニケーションツールは、当事者の心理的負担を軽減し、共感を深めることで、医療と社会双方での痛みの理解を進展させる可能性を秘めている。今後の展開が注目される中で、私自身も患者と医師の架け橋となる新しいコミュニケーション手段の普及に努めてい